DEVELOPER'S JOURNAL
NOTE 01 · THE FOREST
森の場面もがき録——一枚のスタイル画から歩ける地形へ
基準画をなぜ気軽に差し替えないか、地形をどう焼くか、地図の縁の幕、それに二つの事故——取り壊したタイトル画面と、祠に見えた守護像。
ここにあるのは自分で書いた記録で、失敗や迷い、まだ終わっていないことにも触れています。書いているのは現在の状態で、最終形でも、いかなる発売の約束でもありません。
はじめに
ゲームのダンジョン選択画面には四つの名前が並んでいます。森の遺跡、朝霧の湿地、赤月鉱山、古王庭。それぞれ一行の説明つき、三言語そろい。そして「挑戦可能」なのは森の遺跡だけで、残り三つは「未解放」——解放条件を満たしていないのではなく、いまは名前とその一行しかなく、後ろには何もない。画面に残しているのは、この世界が最終的にどれくらいの大きさになるはずかを自分に思い出させるためで、いま埋まっているのは四分の一だけです。
この一編はその四分の一がどう育ったかと、途中で起こした事故の記録です。
スタイル画
森の姿は初日に決まりました。四枚の候補から選んだ Lush Fine——細かいボクセルの粒、冷たく濃い緑、明るい石、暖色の差し色、明るくやわらかい昼、森と遺跡が七対三。以来それが唯一の基準で、「もっといい基準画を生成し直そう」という提案はどれも別途の承認が要ります。理由は単純で、基準を気軽に差し替えられるとスタイルが少しずつ流れ、流れは気づいたころには別のゲームになっているからです。
地形
地形はエディタで一つずつ置いたものではなく、スクリプトが高さマップから焼き出すもの。連続した地面、衝突、ナビゲーション、数十枚の石板、数十の木と遺跡のインスタンス、同じ入力からは必ず同じ結果。序盤は確かに遅いのですが、「この変更で地面が壊れなかったか」にはいつでも答えられます。焼き直して比べればいいので、目で場面を探し回らなくて済む。
焼いても解決しないのは、地図に端があること。戦場の正規の範囲は円で、縁まで歩くと世界がそこで「切れて」向こうは虚無。遊ぶ分には構わなくても、見た目は落ち着かない。あとで純粋に表現だけの遠景を足しました。生成した森の幕を本当の地形の外側に掛け、カメラに合わせて少し動かす。衝突もナビゲーションもなく、どのルールにも関わらず、仕事は森がまだ続いているように見せることだけ。この層を作るときに一つ規律を決めました。幕のスタイル入力はあの基準画だけ、実機スクリーンショットはカメラと縮尺を合わせるためにしか使わず、色やスタイルの元にしない。細かすぎるようですが、三十日後の森が同じ森かどうかを決めるのはそこです。
実機スクリーンショット · 開発中ビルドタイトル画面、取り壊し
取り壊し
7 月 18 日、タイトル画面をまるごと取り壊しました。その前の数日、参考画像に近づけようとしてかなり作り込んでいたのです。水と滝のシェーダー、体積霧、背景のリング、地面への散布、新しいトーンマップに色調のルックアップテーブル。どれも単体では成立していて、合わせて一目見たら——参考画像から離れすぎている。保留です。反復しない、採用しない、既定値も反転しない、失敗したキャプチャは「失敗した試みは開示する」の原則で全部残す。
ただし同じ日にもう一つ決めました。光の筋のカード、松明、トーンマップ、色調テーブルの四つは、そのまま戦闘画面へ回す。タイトルで成立しなかったことは、それ自体が成立しないことを意味しない。「方向が間違っていた」と「部品が間違っていた」は別の話だと分けて考えたのは、たぶんこのプロジェクトで初めてでした。前者は取り壊せるし、後者を道連れにする必要はない。
守護像
祠に見える
8 月 4 日の事故はもう少しひどい。遺跡の奥の聖域を作っていて、門の前に木の根に半分埋もれた守護像を立てたかった。形状は生成、派生は自動、数千項目の機械チェックは全部緑。画面を開いた第一印象は、これは守護者じゃない、祠の一部か小さな建物だ、でした。顔がなく、手がなく、人の形に見えない。
あとの監査は容赦なく書きました。原因が本当にパイプライン側にあったからです。派生の途中で石積みの壁用の着色手順が人の形に流用されていた。全体にかけたボクセルの統合で百二十万あまりの三角形が四千あまりに潰され、最初に消えたのはちょうど目、指、手首、膝のあいだの隙間——形を「人」として読ませるものそのもの。そして三千項目あまりのチェックのどれも「ラベルを外してもこれは守護者に見えるか」とは訊いていなかった。機械チェックは意味を見ない。教えられたものしか見ません。
守護像は却下され、変更不可の失敗履歴としてリポジトリに残り、どの版にもレンダリングされていません。聖域のほうは生き残って、いまはタイトル画面の背景です。廃墟と水辺を 28 秒でゆっくり一周する実時間カメラ、始点と終点がつながっていてカットなし。戦場としては没、映像としてはあり。
町
出発の前には場所が要ります。それが旅人の広場。八人までの安全地帯で、傷つかず、スキルもなく、ぶつかりもしない。NPC も店も依頼もない——「まだ」ではなく、いまの設計にそもそもない。町の役目は一つだけ、一緒に出発する人が落ち合って北門まで歩くこと。
RPG の町にはふつう鍛冶屋と宿があって辻に依頼をくれる誰かがいるもので、美術側でも鍛冶屋の位置は描いたことがあります。でもそれは絵の上の位置で、後ろには商人も持ち物も取引の手順もない。実在するまでサイトで「機能」として書くつもりはありません。オアシスの市場も同じ類です。町の気候が違ったらどう見えるか、砂岩、椰子、動かない水面——絵としての検証で、中には入れない。
実機スクリーンショット · 開発中ビルドおわりに
森はまだ育っています。旅人の広場には入れて、森の遺跡では戦えて、聖域はタイトル画面で回っていて、残り三か所はまだ名前だけ。町の細部、遠景の重なり、縁の読みやすさは反復の途中。この一編は、名前しかない部分も含めて、いまの姿の記録です。